図書館と観光

「みんなの図書館」への原稿がなかなか捗らない。7月初旬にあった図問研大会の鼎談を
報告がわりにまとめてつつ、自論を展開したいと思っている。

 「観光」という営みのトレンドが、「着地型観光」といわれるように変わって来ている。
そのようなアプローチでは、図書館が観光資源としてあり得るのか、などという問いは
あまり意味をなさない。

 別に資源になうがなるまいが、観光という非日常的営みが、行動者の余暇として、また
学習として、その人をエンパワーメントできればいい。従来の「お客様・発散型」の旅だけ
が、リフレッシュのネタではない。

 人間として、仕事をしているだけでは得られない人間とのふれ合いによる気づきや、
物言わぬ自然との対峙による説明不可な感動もあるだろう。

 そうした、いわゆる観光地ではない農家民泊のような、その土地自体を楽しむ、
人とのふれあいや文化に癒され学ぶというとき、ガイドブックにはならない郷土の情報を
誰が旅行者に提供するのか、というところが、ニッチサービスとして浮かび上がる。

 だがしかし、旅行者への情報提供は副産物に過ぎない。実は、地域の人々に、自分たちの
暮らしそのものが、農や森林の営みそのものが、都市の人々にとっては得難い観光資源なの
だとということを、そして、その土地にしかない、伝説や文化、連綿と受け継がれてきた
生活文化が「憧れ」として存在する。これをしっかりと活字や映像、あるいは習慣として
残ししていく、そのような文化的な営みにこそ、図書館という情報収集と保存、そして提供
に責任を持つ機関がなすべき重要な仕事があるのだ。
 そのことによって、その地域文化はより可視化され、住民によって継続をしていこう
とするインセンティブにもなり得る。
 そうした営みの集積としての地域資料を、訪れようとする観光客が、あるいは訪れた時に
利用すればいい。

 そのようなことを、鼎談の報告とともに記したい。