「教会としての物理的図書館」by橋本大也氏
『ブックビジネス2.0−ウェブ時代の新しい本の生態系』
(実業之日本社、2010年、1995円)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4408108537/arg-22/
の橋本大也氏のセクションに、図書館にまつわるとてもいい
コメントがあった。
帰国子女だった氏は、学校になじめず高校をドロップアウト。
プチ家出の逃避先が図書館だったという。
以下は、少し長いが引用させて頂く。
家出の逃避先として入った図書館で、私は大検の存在を知りました。
学校をやめても自分の未来が開かれていることを図書館で知ったのです。
行き詰まった人生に新たな選択肢が見つかって明るい気持ちになりました。
居場所として毎日使えたこともありがたかったです。万人を迎え入れて、
静かに放っておいてくれる図書館の存在は、当時行き場のない私にとって
どなんに大きかったことか、いまあらためて思います。
(中略)私は公共性の意義とは、そうしたマイノリティの弱者を救済する
ことだと思うのです。(中略)
膨大な蔵書の質量や管理された静謐な空間を見せつけることで、子供たち
に知の世界の奥行きや豊かさを感じさせる教育の場としても、図書館は価値
があると思います。(中略)
私が求めた公共図書館の機能は、欧米におけるキリスト教の教会の機能に
似ているのかもしれません。図書館に神はいませんが、情報による救いと癒し
の場として、地域コミュニティの場として、今後も図書館には頑張ってほしい
なと考えます。p73-p75
橋本さん、ありがとうございます。
近代公共図書館のあり方について、実にシンプルに、そして実際的に綴って
頂いた名文です。
日本の公立図書館は、そうした理念を十分に理解して運営しているところばか
りでは、残念ながらないですね。
とても謙虚に、真摯に、「貸出」につながる利用者には向き合っているけれど、
そのコミュニティにいる弱者、あるいは未だ見ぬ読者への働きかけとしての、
地域のニーズを汲み取った選書をしての図書館サービスは、まだまだ取り組まれ
ていない…。各地の公共図書館の書架、とりわけ一般成人書の主題の棚を見て、
その貧しさを思います。